第104回 看護師国家試験 午後 問96 解説
📝 問題
次の文を読み94〜96の問いに答えよ。Aさん(65歳、男性、会社員)は、午後2時、会議の最中に急に発語しづらくなり、右上下肢に力が入らなくなったため、同僚に連れられて救急外来を受診した。既往歴に特記すべきことはない。来院時、ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅰ-3、瞳孔径は両側2.0 mm。呼吸数18/分、脈拍60〜80/分、不整で、血圧176/100 mmHg。右上下肢に麻痺がある。午後4時、Aさんの頭部CTの所見で特に異常は認められなかったが、MRIの所見では左側頭葉に虚血性の病変が認められた。 減圧開頭術後2週。気管内チューブは抜管され、意識レベルはジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉Ⅱ-10である。右上下肢の麻痺と運動性失語とが認められ、発語は少ない。利き手は右手である。 Aさんとのコミュニケーションの方法で最も適切なのはどれか。
✅ 正解
4
💡 解説
✅ 運動性失語のあるAさんには、イラストを用いて意思を確かめるのが最も適切である。
Aさんには運動性失語と右半身の麻痺が残っている。来院時からすでに右上下肢が麻痺しており、障害は左の中大脳動脈が養う広い範囲に及んでいた。MRIで写ったのは左側頭葉の病変だが、言葉を作り出す前頭葉の運動性言語中枢も傷ついたと考えられる。
運動性失語は、言いたいことは頭の中にあるのに、言葉として出てこない状態である。話す・書くという言葉を組み立てる側が障害され、聞いて理解する力は比較的保たれる。
そこで、言葉を組み立てずに答えられる方法を選ぶ。絵や写真を見せれば、指さしと「はい・いいえ」だけで気持ちを伝えられる。
他の選択肢は使えない。筆談も文字盤も文字を組み立てる作業で、しかも利き手の右手が麻痺している。大きな声で話すのは耳の聞こえにくい人への配慮である。
運動性失語とは
言いたいことは分かっているのに、言葉として口に出せなくなる状態。相手の話は理解できることが多い。
- 1
筆談を促す。不正解
筆談は文字を思い出して書く作業で、運動性失語では難しい。利き手の右手が麻痺していることも重なる。
- 2
文字盤を用いる。不正解
文字盤は文字を1つずつ選んで言葉を組み立てる道具。言葉を組み立てること自体が難しい運動性失語には向かない。
- 3
大きな声で話す。不正解
大きな声が助けになるのは耳の聞こえにくい人。Aさんは聞いて理解する力が保たれており、声の大きさの問題ではない。
- 4
イラストを用いる。正解
絵や写真を指さしてもらえば、言葉を組み立てなくても意思を伝えられる。「はい・いいえ」で答えられる聞き方も併せて使う。
📚 混同しやすいので注意
失語は「話せるか」と「分かるか」を入れ替えて問われる。障害される場所と、話す・聞くのどちらが残るかを対にして覚えよう。
| 比べる点 | 運動性失語(Broca〈ブローカ〉失語) | 感覚性失語(Wernicke〈ウェルニッケ〉失語) |
|---|---|---|
| 障害される場所 | 前頭葉の運動性言語中枢 | 側頭葉の感覚性言語中枢 |
| 話す | たどたどしく、言葉が出にくい | 流ちょうだが意味の通らない言葉になる |
| 聞いて理解する | 比較的保たれる | 障害される |
| 本人の自覚 | 話しにくさが分かり、いらだちやすい | 間違いに気づきにくい |
参考: 脳血管障害後のコミュニケーション障害への看護/成人看護学 脳・神経疾患の看護
出典:「第104回看護師国家試験の問題および正答について」(厚生労働省)を加工して作成 → 出典について